在宅看取りとは
在宅看取りとは、病院・施設ではなく自宅で最期の時を迎えることです。近年、「住み慣れた家で家族と一緒に最期を迎えたい」という方が増えており、在宅看取りへの関心が高まっています。
厚生労働省の調査によると、国民の約60%が「自宅での療養を望む」と答えているにもかかわらず、実際に自宅で亡くなる方は約14%にとどまります。この「望みと現実のギャップ」を埋めるのが、在宅医療・訪問看護・介護の支援チームです。
在宅看取りを選ぶ前に確認すること
本人の意思確認(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)
在宅看取りは本人の意思が最も大切です。まず本人が「家で最期を迎えたい」と望んでいるかどうかを、元気なうちから話し合っておきましょう。
ACP(人生会議)とは、将来の医療・ケアについて本人・家族・医療者が繰り返し話し合うプロセスです。以下のような点を確認しておくと、緊急時の判断が楽になります。
- 延命治療(心肺蘇生・人工呼吸器等)を希望するかどうか
- 最期を迎える場所の希望
- 苦痛を和らげること(緩和ケア)をどこまで希望するか
- 誰に最期を看取ってほしいか
在宅看取りに必要な支援体制
在宅で安心して最期を迎えるためには、以下の支援体制が必要です。
- 訪問診療医(在宅医):定期的な訪問診療と、最期の死亡診断書の作成
- 訪問看護師:身体管理・症状コントロール・家族サポート
- ケアマネジャー:介護サービス全体のコーディネート
- 訪問介護員:日常生活の介護支援
- 薬剤師:薬剤の管理・服薬指導
この多職種チームが連携することで、在宅での看取りが可能になります。
死が近づいたときの身体変化
在宅で療養されている方が終末期に入ると、徐々に身体に変化が現れてきます。訪問看護師から事前に説明を受けておくことで、家族は慌てず落ち着いて対応できます。
亡くなる数週間〜1か月前の変化
- 食欲の低下・水分・食事量の減少
- 活動量の低下・ほとんど寝ている時間が増える
- 好きなことへの関心が薄れる
家族にできること
- 食べること・飲むことを無理に促さない(これは自然なプロセスです)
- そばにいて話しかけ、手を握る
- 本人が安楽に過ごせる環境を整える
亡くなる数日前の変化
- 手足が冷たくなり、チアノーゼ(紫色の変色)が出る
- 血圧の低下・脈が弱く速くなる
- 呼吸のリズムが不規則になる(チェーン・ストークス呼吸)
- 意識が遠のく・呼びかけへの反応が鈍くなる
家族にできること
- 呼吸が変わっても慌てない(自然な変化です)
- 「聴覚は最後まで残る」といわれるため、声をかけ続ける
- 必要に応じて訪問看護師・在宅医に連絡する
亡くなる直前の変化(死前喘鳴)
死前喘鳴(いびき様の呼吸音):咽頭・気管に分泌物がたまることで起こる「ゴロゴロ」とした音です。苦しそうに見えますが、意識が低下しているため本人が苦痛を感じているわけではありません。
吸引は逆に刺激になることがあるため、無理に除去しないことが多いです。口腔内の保湿・体位調整(側臥位など)で対応します。
死亡時の対応:家族がすべきこと
息を引き取ったら
家族だけの場合に息を引き取ったと思われたら:
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まず在宅医・訪問看護師に電話する
- 担当医または訪問看護ステーションの緊急連絡先に電話
- 救急車は呼ばない(在宅看取りの場合、病院搬送が必要でないことが多い)
-
医師の死亡確認を待つ
- 在宅医が自宅に来て死亡を確認し、死亡診断書を作成
- 通常1〜2時間以内に来てもらえます
-
葬儀社への連絡
- 死亡診断書が出てから葬儀社に連絡
- あらかじめ葬儀社を決めておくと、このときに慌てません
事前に準備しておくこと
- 在宅医・訪問看護師の緊急連絡先をすぐ見える場所に貼っておく
- 「看取りパンフレット」(死が近づいた時の変化と対応がまとめられた冊子)を読んでおく
- 葬儀社をあらかじめ決めておく(見積もりだけでもOK)
- 本人が望む形(着替え・好きだった物など)を家族間で共有しておく
訪問看護師が果たす役割
身体管理・症状コントロール
終末期の訪問看護師の役割は、医療処置だけではありません。
- 疼痛・呼吸困難・倦怠感などの症状を緩和する
- 医師に連絡して薬剤調整を依頼する
- 皮膚・口腔ケアを継続する
家族への精神的サポート
家族は「正しいケアができているか」「何かしてあげることはないか」と不安になりがちです。訪問看護師は:
- 「今これで十分です。上手にケアできています」と具体的に伝える
- 死前喘鳴などの変化を事前に説明し、慌てなくて済むようにする
- 「いつでも連絡してください」と安心感を与える
看取り後のグリーフケア
家族の悲嘆は看取り後からが本番です。訪問看護師は看取り後も:
- 1〜2週間後に電話・訪問でフォローアップ
- 悲しみ・後悔の感情を受け止める
- 長期にわたる悲嘆(複雑性悲嘆)が見られる場合は専門家への橋渡し
在宅看取りを経験したご家族の声
在宅で看取りを経験したご家族の多くが、後に「在宅で最期を迎えさせることができてよかった」と話されます。
「病院ではできなかった、本人が好きだった音楽をかけてあげた」「家族が全員そろって看取れた」「本人が笑顔のまま逝った」——そうした温かい時間は、在宅だからこそ生まれます。
まとめ
在宅看取りは、本人・家族・支援チームが協力することで実現できます。
- 本人の意思確認(ACP)を早めに行う
- 訪問診療医・訪問看護師・ケアマネジャーの体制を整える
- 死が近づいたときの身体変化を事前に知っておく
- 息を引き取ったら在宅医に連絡し、救急車は呼ばない
- 訪問看護師は身体管理・家族支援・グリーフケアを担う
「最期まで自宅で、自分らしく」——そのための準備と支援を、HOKAN STATIONは引き続き発信していきます。