訪問看護の保険制度:2つの選択肢
訪問看護は「医療保険」と「介護保険」の両方から利用できますが、どちらが適用されるかは利用者の状況によって異なります。これを正しく理解することで、適切なサービス量と費用負担で利用できます。
保険の種類ごとの概要
| 項目 | 医療保険 | 介護保険 |
|---|---|---|
| 主な対象 | 医療の必要性が高い方 | 要介護・要支援認定を受けた方 |
| 請求先 | 健康保険組合・国保等 | 市区町村(介護保険者) |
| 自己負担 | 1〜3割 | 1〜3割 |
| 訪問回数制限 | あり(原則週3日) | ケアプランで設定 |
介護保険が適用されるケース
対象者の条件
介護保険が利用できるのは以下の方です。
65歳以上(第1号被保険者)
- 要支援1・2または要介護1〜5の認定を受けている方
- 原因を問わず介護・支援が必要な場合に適用
40〜64歳(第2号被保険者)
- 加齢に伴う特定疾病(16疾病)による要介護・要支援状態の方
- 特定疾病:がん末期・関節リウマチ・筋萎縮性側索硬化症(ALS)・後縦靱帯骨化症・骨折を伴う骨粗鬆症・多系統萎縮症・初老期の認知症・脊髄小脳変性症・脊柱管狭窄症・早老症・多発性硬化症・糖尿病神経障害等・脳血管疾患・パーキンソン病関連疾患・閉塞性動脈硬化症・慢性閉塞性肺疾患(COPD)・両側の膝関節または股関節の著しい変形を伴う変形性関節症
介護保険での訪問看護の特徴
- 訪問回数・時間に上限なし(ケアプランの限度額内で設定)
- 週3回以上の訪問も可能
- 介護支援専門員(ケアマネジャー)がケアプランを作成
- 同じ日に訪問介護と組み合わせて利用できる
医療保険が適用されるケース
医療保険が優先される状況
以下の場合は、介護保険の認定があっても医療保険が適用されます。
1. 特定の疾病・状態
- 末期がん(医師が一般に認められた医学的知見に基づき回復の見込みがないと診断)
- 厚生労働大臣が定める疾病等(難病・後天性免疫不全症候群・多発性硬化症・重症筋無力症など19疾病)
2. 精神科訪問看護
- 統合失調症・双極性障害・重度認知症などで精神科訪問看護が必要な場合
3. 認定を受けていない方
- 40歳未満の方
- 40〜64歳で特定疾病に該当しない方
- 65歳以上でも要介護認定を受けていない方
4. 急性増悪・退院直後など
- 主治医が「特別訪問看護指示書」を発行した場合(最大2週間)
医療保険での訪問看護の特徴
訪問回数の制限 原則として週3日まで(1日1回)。ただし、特掲診療料の施設基準等に規定する疾病等の場合は週4日以上も可能。
複数の事業所の利用制限 医療保険では、原則1か所の訪問看護ステーションのみ利用可能(例外あり)。
費用(2024年度)
| 区分 | 基本療養費(1日あたり) |
|---|---|
| 週3日目まで | 5,550円 |
| 週4日目以降 | 6,550円 |
| 難病等(複数名訪問) | 加算あり |
自己負担は1〜3割(年齢・所得による)。
介護保険と医療保険の「優先順位」
原則:介護保険が優先
65歳以上で要介護認定を受けている場合、訪問看護は介護保険が優先されます。
ただし、以下の場合は介護保険の認定があっても医療保険が適用されます(前述の通り)。
迷ったときの判断フロー
要介護・要支援認定あり?
↓ YES
末期がん・難病等19疾病に該当?
↓ YES → 医療保険
↓ NO
精神科訪問看護が必要?
↓ YES → 医療保険
↓ NO
→ 介護保険
要介護・要支援認定なし?
→ 医療保険
確認方法
どちらの保険が適用されるかは、主治医・ケアマネジャー・訪問看護ステーションに確認してください。請求の仕組み上、ステーション側が適切な保険を選択して請求しますが、利用者側も基本的な知識として把握しておくことが大切です。
費用の比較:実際いくらかかるの?
介護保険の自己負担例
要介護3の方が週3回(各60分)訪問看護を利用した場合の月額自己負担の目安:
- 1割負担:約5,000〜8,000円/月
- 2割負担:約10,000〜16,000円/月
- 3割負担:約15,000〜24,000円/月
※別途、交通費が発生する場合があります。
医療保険の自己負担例
週3回(月12回)、1割負担の場合:
- 基本療養費:5,550円 × 12回 = 66,600円/月
- 自己負担(1割):約6,660円/月
3割負担の場合:約20,000円/月
費用軽減制度
高額療養費制度(医療保険) 1か月の医療費が上限額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
高額介護サービス費(介護保険) 1か月の介護サービスの自己負担が上限額を超えた場合、超過分が払い戻されます。
生活保護・公費負担医療 生活保護受給者や特定疾患(難病)の認定を受けた方は、自己負担が無料または軽減されます。
まとめ
訪問看護の保険適用は、利用者の状況によって医療保険・介護保険のどちらかが適用されます。
- 介護保険優先:65歳以上で要介護認定あり(難病・がん末期等を除く)
- 医療保険適用:末期がん・難病19疾病・認定なし・精神科訪問看護・特別指示書発行時
- 費用は保険の種類・自己負担割合・利用頻度によって異なる
- 費用軽減制度(高額療養費・高額介護サービス費)も活用できる
「どちらの保険を使えばよいか分からない」という場合は、ケアマネジャーや訪問看護ステーションに相談してください。