胃ろう(PEG)とは
胃ろう(PEG:Percutaneous Endoscopic Gastrostomy/経皮内視鏡的胃瘻造設術)は、腹部に小さな穴(瘻孔)を開け、胃に直接チューブを通して栄養を注入できるようにした処置です。
嚥下障害(飲み込みの障害)により口から十分な栄養を摂れなくなった方に造設されることが多く、脳卒中後遺症・ALS・神経疾患・がん・認知症末期などの患者さんが対象となります。
胃ろうの種類
胃ろうのボタン・チューブ部分(体外固定部)には主に以下の種類があります。
| 種類 | 特徴 |
|---|---|
| ボタン型 | 体外に出る部分が小さくすっきり。日常生活に支障が少ない |
| チューブ型 | 接続が簡単だが、体外に出る部分が長い |
| バルーン型(体内) | 交換が容易(月1回程度)。バルーン破損のリスクあり |
| バンパー型(体内) | 交換は4〜6か月ごと。耐久性が高い |
訪問看護師が行う胃ろうの日常ケア
1. ストーマ(瘻孔周囲)のケア
胃ろう周囲の皮膚は、感染・スキントラブルが起きやすい部位です。毎回の訪問でチェックすべき観察ポイントは以下の通りです。
正常な状態
- 皮膚に発赤・腫脹・熱感なし
- 滲出液・出血なし
- 不快感・疼痛なし
- チューブはしっかり固定されている
要注意のサイン
- 発赤・腫脹・熱感(感染の初期サイン)
- 滲出液の増加・臭気の変化
- 肉芽組織の形成(過剰な組織が盛り上がる)
- 皮膚のただれ・びらん
ケアの手順
- 清潔な手袋を着用
- ガーゼまたは専用クリーナーで瘻孔周囲を拭く
- チューブを360度回転させ(バルーン型の場合)固着を防ぐ
- 必要に応じてガーゼで保護
- 観察内容を記録
2. 経管栄養の注入ケア
注入前の確認事項
- 胃内容物の確認:注入前に胃の残留を確認(ポジションが重要)
- 栄養剤の種類・量・速度が指示通りか確認
- 注入セット(チューブ・シリンジ)の清潔状態
- 体位の確認(上半身30〜45度挙上が基本)
注入の手順
- 手洗い・手袋着用
- 患者を上半身30〜45度挙上させる
- チューブの接続部を確認・清拭
- 胃残留量の確認(シリンジで吸引 → 150mL以上なら注入を延期して医師へ報告)
- 栄養剤を常温に近い状態で準備(冷たい栄養剤は腹痛・下痢の原因に)
- 指定の速度で注入(急速注入は嘔吐・誤嚥のリスク)
- 注入後、白湯(50〜100mL)でフラッシュ
- チューブをクランプし接続部を外す
- 注入後30分〜1時間は上体挙上を維持
3. チューブの管理
詰まりの予防
- 注入後は必ず白湯でフラッシュ
- 薬剤を注入する場合は1種類ずつ、十分な白湯でフラッシュ
- 栄養剤の種類によって詰まりやすさが異なる(粘度の高いものに注意)
バルーン型チューブの水量確認 バルーン型は月1回、内部の蒸留水量を確認・補充します(通常5〜10mL)。水量が減少するとチューブが抜ける危険があります。
主な合併症と訪問看護師の対応
1. 瘻孔周囲感染
症状:発赤・腫脹・熱感・滲出液の増加・悪臭
対応
- 毎日の丁寧な洗浄・清拭
- 医師への報告と抗菌薬処方の確認
- 悪化する場合は皮膚科または消化器科への紹介を検討
2. 肉芽形成
瘻孔周囲に過剰な肉芽(盛り上がった赤い組織)が形成されることがあります。
対応
- チューブの圧迫が原因の場合はチューブの固定位置を調整
- ステロイド軟膏の塗布(医師の指示のもと)
- 硝酸銀による焼灼処置が必要な場合は医師・皮膚科へ
3. 胃食道逆流・誤嚥
予防策
- 注入体位の徹底(30〜45度挙上)
- 注入速度を守る(急速注入を避ける)
- 注入後の体位維持(最低30分)
- 就寝前の注入を避けるか量を減らす
誤嚥性肺炎のリスク 胃ろう造設患者でも誤嚥性肺炎は起きます。口腔ケアの継続・唾液の管理が予防の鍵です。
4. チューブの閉塞
詰まった時の対応(訪問時の対処)
- 白湯でゆっくり押し込む・吸引を繰り返す
- コーラ・炭酸水での洗浄(医師の指示があれば)
- 改善しない場合は医師に報告し、チューブ交換を検討
5. 予期しない抜去
バルーン型チューブが抜けてしまった場合は緊急対応が必要です。
緊急対応手順
- 瘻孔が閉鎖しないよう、ガーゼを当てて主治医に即座に連絡
- 6〜8時間以内に再挿入が可能な場合が多い(瘻孔は時間とともに縮小)
- 緊急受診・往診を手配
家族への指導ポイント
訪問看護師は家族に対して以下の指導を行います。
- 毎日の瘻孔周囲観察の方法(何を見るか)
- 栄養注入の手順と注意事項
- 緊急連絡が必要なサインの説明
- 注入セットの洗浄・管理方法
指導時のポイント
- 実際に見せながら、次に家族にやってもらう(ティーチバック)
- 「こんなサインが出たら電話して」と具体的に伝える
- 不安が強い家族には書面(チェックリスト)で補強する
まとめ
胃ろう(PEG)の在宅管理では、日常的なケアの継続と合併症の早期発見が重要です。
- 瘻孔周囲の毎日の観察・清潔ケア
- 体位・速度を守った安全な栄養注入
- 白湯フラッシュによるチューブ閉塞の予防
- バルーン水量の定期確認
- 感染・肉芽・誤嚥・閉塞・抜去への対応手順の把握
訪問看護師として正確な技術と観察力を身につけることで、患者さんと家族の安心した在宅生活を支えることができます。