褥瘡(床ずれ)とは

褥瘡とは、身体の一部が継続的に圧迫されることで皮膚・皮下組織が損傷された状態です。俗に「床ずれ」とも呼ばれ、寝たきりや長時間同一体位を余儀なくされている方に発生しやすい合併症です。

在宅では専門職が常時いないため、褥瘡の予防と早期発見が特に重要です。

褥瘡の発生メカニズム

褥瘡は主に以下の3要因が重なって発生します。

  1. 圧力:骨突出部への持続的な圧迫
  2. ずれ力:ベッドアップ時などに皮膚が引っ張られる力
  3. 摩擦:シーツや衣類との摩擦

これらに加えて、**湿潤環境(尿・便・汗による)**が皮膚を脆弱にし、褥瘡リスクを高めます。

好発部位

体位好発部位
仰臥位仙骨部・踵部・後頭部・肩甲骨部
側臥位大転子部・腓骨頭部・外果部・耳介部
腹臥位前額部・胸部・腸骨部・膝蓋部
坐位坐骨部・仙骨部・踵部

褥瘡リスクアセスメント

ブレーデンスケールの活用

褥瘡リスクの評価にはブレーデンスケールが広く使用されています。6つのサブスケール(知覚の認知・湿潤・活動性・可動性・栄養・摩擦とずれ)を採点し、合計点でリスクを判定します。

合計点リスク評価
18点以下リスクあり
14〜18点軽度リスク
10〜13点中等度リスク
9点以下高度リスク

訪問看護開始時と定期的(月1回程度)にスケールを用いて評価し、介入計画に反映させます。

褥瘡のステージ分類(NPUAP分類)

ステージ状態
ステージⅠ圧迫を除いても消えない発赤。皮膚損傷なし
ステージⅡ真皮に及ぶ部分層損傷。水疱・びらんあり
ステージⅢ皮下組織に及ぶ全層損傷
ステージⅣ筋・骨・腱・関節に及ぶ全層損傷
DTI深部組織損傷疑い。皮膚は無傷だが深部が損傷
判定不能創底が壊死組織で覆われ深さが不明

褥瘡予防の実践

体圧分散用具の選択

適切な体圧分散寝具(マットレス)の導入が褥瘡予防の基本です。

種類特徴・適応
ウレタンフォームマットレスリスクが低〜中程度の方
高機能ウレタンマットレス中程度リスク・コスト重視
エアマットレス(静止型)中〜高リスク
エアマットレス(圧切替型)高リスク・体位変換が困難な方
ウォーターマットレス一部の高リスク患者

介護保険のレンタルでエアマットレスが利用できる場合があります。ケアマネジャーと連携して早期に導入を検討しましょう。

体位変換の基本

体位変換の原則

  • 原則として2時間おきの体位変換(高機能マットレス使用時は4時間まで延長可)
  • 30度側臥位(骨突出部への直接圧迫を避ける傾き)
  • 仙骨部への直接圧迫を避けるポジショニング

家族への指導ポイント

  • タイマーを活用して2時間おきの体位変換を習慣化
  • 体位変換日誌で記録(どの向きにしたか)
  • 摩擦・ずれを防ぐ移動介助の方法(スライディングシート等)

皮膚のスキンケア

保湿ケア:乾燥した皮膚は脆弱で褥瘡リスクが高まります。入浴後・清拭後にローション・クリームで保湿しましょう。

失禁ケア(MDRPU対策)

  • 尿・便による湿潤を最小化するために撥水性スキンケア製品を使用
  • 尿失禁のある患者には吸収パッドの選択・交換頻度の見直し
  • 便失禁時は速やかな清拭・洗浄

頭部・踵部の特別ケア:踵部は好発部位であり、ポジショニングピローや踵浮かし用クッションを活用して除圧します。

栄養管理の重要性

褥瘡の予防・治癒にはタンパク質・亜鉛・ビタミンCが特に重要です。

栄養素褥瘡への関与食品例
タンパク質組織修復・皮膚の弾力性維持肉・魚・卵・豆腐
亜鉛皮膚の再生・免疫機能牡蠣・赤身肉・ナッツ
ビタミンCコラーゲン合成・抗酸化野菜・柑橘類
水分皮膚の柔軟性維持水・お茶・スープ

低栄養(アルブミン<3.0g/dL)は褥瘡の重大なリスク因子です。経口摂取量の把握と、必要に応じて管理栄養士へのコンサルテーションを行いましょう。

褥瘡の治療とドレッシング

褥瘡治療の原則「TIME」

要素内容
T(Tissue)壊死・不健康組織の除去(デブリードマン)
I(Infection/Inflammation)感染・炎症のコントロール
M(Moisture balance)適切な湿潤環境の維持
E(Epithelial edge advancement)創縁の上皮化促進

主なドレッシング材の種類と選択

ドレッシング材適応段階特徴
ハイドロコロイドステージⅡ・浅いⅢ湿潤環境維持・貼るだけで簡単
ポリウレタンフォーム滲出液中〜多量高吸収性・クッション効果
アルギン酸塩滲出液多量・感染あり高吸収性・抗菌作用
銀含有ドレッシング感染創抗菌・感染コントロール
ハイドロゲル壊死組織の軟化壊死組織のデブリードマン促進

ドレッシング材の選択は医師との協議のもと行います。在宅では同じ製品が安定供給されるか(薬局での入手可否)も考慮します。

感染徴候の観察

以下のサインは創感染の可能性があります。医師への報告が必要です。

  • 創周囲の発赤・腫脹・熱感の拡大
  • 滲出液の増加・悪臭・膿性滲出液
  • 患者の発熱・創部の疼痛増強
  • 創の増悪・縮小しない

まとめ

在宅での褥瘡管理は「予防」「早期発見」「適切な治療」「家族指導」の4本柱で行います。

  • ブレーデンスケールで定期的にリスク評価
  • 体圧分散用具・体位変換・スキンケアで予防を徹底
  • 栄養管理が褥瘡の予防・治癒に直結する
  • ステージに応じたドレッシング材を選択
  • 感染徴候を早期に発見し医師に報告

訪問看護師のアセスメント力と家族教育が、在宅での褥瘡ゼロを目指す最大の武器です。