訪問看護師の仕事とは
訪問看護師は、病院や施設に勤務する看護師とは異なり、患者さんの自宅や生活の場に直接訪問して看護を提供する専門職です。病院のように決まった設備があるわけではなく、限られた資源の中で高度な判断力と技術を発揮することが求められます。
近年、高齢化の進展や「住み慣れた場所で最期まで生きたい」というニーズの高まりを背景に、訪問看護のニーズは急増しています。訪問看護師の仕事は多岐にわたり、医療処置だけでなく、生活支援、精神的サポート、家族への指導まで幅広い役割を担います。
この記事では、訪問看護師の実際の1日の流れを時系列で詳しく解説します。
訪問看護師の1日のスケジュール
8:00〜9:00 出勤・朝のミーティング
多くの訪問看護ステーションでは、1日が朝のミーティングから始まります。
朝のミーティングで確認すること
- 当日の訪問件数・担当者の割り当て
- 前日からの申し送り(緊急対応・状態変化のあった利用者情報)
- 新規利用者や退院・入院のケース情報
- 天候・交通状況の確認(移動手段の調整)
- 記録の確認と引き継ぎ事項
ミーティング後は、訪問バッグの準備を行います。血圧計・体温計・パルスオキシメーターなどの医療機器、処置に必要な消耗品(ガーゼ・テープ・手袋など)、薬剤(インスリン・点滴セットなど)を確認し、訪問先に合わせてセッティングします。
9:00〜12:00 午前の訪問(3〜4件)
訪問看護師は1日に平均5〜7件程度の訪問を行います。午前中は3〜4件が一般的です。
1件あたりの訪問時間は30〜90分が目安ですが、病状や処置内容によって異なります。
訪問先での主な業務内容は以下の通りです。
バイタルサイン測定・全身観察
到着後まず行うのが、バイタルサインの測定です。
- 血圧・脈拍・体温・呼吸数・SpO2(酸素飽和度)の測定
- 顔色・浮腫・皮膚の状態の観察
- 意識レベルの確認
- 食事・排泄・睡眠の状況確認
異常値があれば、主治医へ報告・指示を仰ぎます。在宅では急変のリスクも常にあるため、わずかな変化を見逃さない観察眼が必要です。
医療処置・ケア
利用者の状態に応じて、さまざまな医療処置を行います。
| 処置の種類 | 内容 |
|---|---|
| 褥瘡ケア | 創傷の観察・洗浄・ドレッシング交換 |
| カテーテル管理 | 尿道カテーテル・胃瘻の管理・交換 |
| 点滴管理 | CV(中心静脈)カテーテルの管理・点滴交換 |
| 呼吸管理 | 人工呼吸器の設定確認・気管吸引 |
| インスリン注射 | 血糖測定・インスリン投与 |
| 服薬管理 | 薬のセット・服薬確認・残薬管理 |
生活支援・リハビリ
医療処置だけでなく、日常生活の質を高める支援も訪問看護師の重要な役割です。
- 清拭・洗髪・口腔ケアなどの清潔ケア
- 体位変換・移動介助
- 廃用症候群予防のための関節可動域訓練
- 排泄ケア(摘便・浣腸を含む)
12:00〜13:00 昼休憩・記録・移動
午前の訪問が終わったら、昼休憩を取りながら記録作業を行います。記録は訪問後できるだけ早く、記憶が新鮮なうちに書くことが重要です。
記録の内容
- バイタルサインの数値
- 処置の内容と結果
- 利用者・家族の訴えや状態変化
- 次回訪問に向けての申し送り事項
- 主治医への報告が必要な事項
現在は電子記録を採用しているステーションが多く、タブレットやスマートフォンを使って訪問先や移動中に記録することも一般的です。
13:00〜17:00 午後の訪問(2〜3件)
午後は2〜3件の訪問を行います。午後の訪問では、ターミナルケアや精神的サポートが必要な利用者への対応も多くなります。
ターミナルケア(終末期ケア)
在宅での看取りを希望する利用者への支援は、訪問看護師の重要な役割のひとつです。
- 疼痛管理(オピオイド系鎮痛剤の使用を含む)
- 症状緩和(呼吸困難・嘔吐・浮腫などへの対応)
- 精神的サポート(利用者・家族への傾聴)
- 死後の処置(エンゼルケア)
ターミナルの時期は特に変化が激しく、夜間・休日の緊急対応も多くなります。
精神科訪問看護
精神疾患を持つ方への訪問看護では、薬の管理や生活支援だけでなく、社会参加の支援や家族への関わりも重要です。統合失調症・うつ病・双極性障害など、さまざまな疾患を持つ方への対応が求められます。
17:00〜18:30 帰社・夕方のミーティング・記録整理
訪問が終わったらステーションに戻り、夕方のミーティングと記録整理を行います。
夕方の業務内容
- 訪問記録の最終確認・提出
- 翌日の訪問準備(スケジュール確認・資材補充)
- 主治医・ケアマネジャーへの報告・連絡
- カンファレンスへの参加(週1〜2回程度)
- 新規利用者のアセスメント計画作成
オンコール(緊急対応)業務
訪問看護師の重要な業務のひとつが、オンコール対応です。多くのステーションでは、24時間365日体制で緊急の連絡に対応しています。
オンコール当番のしくみ
オンコール当番は輪番制で回ることが多く、月に数回〜10回程度担当するステーションが一般的です。
オンコール時の対応の流れ
- 利用者・家族から電話が入る
- 電話でアセスメント(状態の聞き取り)
- 緊急性の判断
- 電話対応で解決できる場合は指導・指示
- 必要と判断した場合は訪問
- 主治医への報告・指示受け
緊急訪問の理由として多いのは、発熱・呼吸苦・転倒・疼痛の増強・点滴トラブルなどです。
多職種との連携
訪問看護師は、単独で働くわけではなく、さまざまな職種と密に連携します。
| 連携する職種 | 連携の内容 |
|---|---|
| 主治医 | 指示書の受け取り・病状報告・緊急時の指示受け |
| ケアマネジャー | ケアプランの調整・サービス調整 |
| 理学療法士・作業療法士 | リハビリ計画の共有・合同訪問 |
| 薬剤師 | 薬の管理・副作用の共有 |
| 介護ヘルパー | 日常生活支援の引き継ぎ |
| 病院の退院支援看護師 | 退院前カンファレンス・情報共有 |
連携の手段としては、電話・FAX・電子メール・ICTシステム(多職種共有記録)などが使われます。近年は、LINEワークスやMCSなどの多職種連携アプリを活用するステーションも増えています。
訪問看護師の仕事のやりがいと大変さ
やりがい
- 利用者・家族との深い関わり:長期的に同じ方と関わることで、信頼関係を築ける
- 在宅での看取りに立ち会える:「家で最期を迎えたい」という願いを支えられる
- 自分の判断・技術が問われる:チームに頼れない分、自律した看護師として成長できる
- 地域医療の担い手:地域包括ケアシステムの重要な役割を担っているという使命感
大変さ
- オンコール対応:夜間・休日も緊急対応があるため、プライベートが制限されることがある
- 移動の負担:自転車・車での訪問は天候・交通状況に左右される
- 孤独感:病院と違い、1人での判断・対応が多い
- 記録作業の多さ:訪問件数に比例して記録量も多い
まとめ
訪問看護師の1日は、訪問・医療処置・記録・多職種連携・オンコール対応と、非常に多岐にわたります。病院看護師とは異なる専門性が求められる職種ですが、利用者の生活に寄り添い、在宅での自分らしい生活を支えるという大きなやりがいがあります。
訪問看護に興味のある方は、ぜひ一度ステーションの見学や体験訪問を検討してみてください。