褥瘡とは何か
褥瘡(じょくそう)は、一般に「床ずれ」とも呼ばれる皮膚の損傷です。同一部位への持続的な圧迫・ずれによって皮膚や皮下組織の血流が障害され、組織が壊死することで発生します。
在宅療養中の高齢者・障がい者では、寝たきり状態・栄養不良・皮膚の脆弱化などにより褥瘡リスクが高く、訪問看護師の重要な役割のひとつが褥瘡の予防と管理です。
褥瘡が発生しやすい部位
仰臥位(仰向け)での好発部位
- 仙骨部(お尻の骨)← 最多
- 踵(かかと)
- 後頭部・肩甲骨部・肘
側臥位(横向き)での好発部位
- 大転子部(股関節の骨)
- 耳介・腓骨頭・内外果(くるぶし)
座位での好発部位
- 坐骨結節(座ったときに当たるお尻の骨)
- 尾骨部・踵
訪問時には、これらの部位を必ずチェックします。
褥瘡の重症度評価(DESIGN-R)
褥瘡の重症度・治癒経過の評価には、**DESIGN-R(デザイン・アール)**が広く使われています。
| 評価項目 | 内容 |
|---|---|
| D(Depth:深さ) | d0〜D5の6段階 |
| E(Exudate:滲出液) | e0〜E6の4段階 |
| S(Size:大きさ) | s0〜S15(面積で評価) |
| I(Inflammation:炎症/感染) | i0〜I9 |
| G(Granulation:肉芽形成) | g0〜G5 |
| N(Necrotic tissue:壊死組織) | n0〜N6 |
| P(Pocket:ポケット) | p0〜P24 |
深さの分類
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| d0 | 皮膚損傷なし(発赤のみ) |
| d1 | 持続する発赤 |
| d2 | 真皮までの損傷 |
| D3 | 皮下組織までの損傷 |
| D4 | 筋肉・腱・骨への損傷 |
| D5 | 骨・関節にまで及ぶ損傷 |
褥瘡の予防ケア
体位変換
最も重要な予防ケアが**体位変換(体の向きを変えること)**です。
基本的な頻度
- 一般的には2時間ごとが目安
- 体圧分散マットレス使用時は4時間ごとでもよいとするガイドラインもある
体位変換のポイント
- 皮膚の「ずれ」を防ぐため、体を引きずらず持ち上げるようにする
- 骨突出部にクッションを入れて浮かせる
- 仰臥位・左側臥位・右側臥位・30度側臥位を組み合わせて循環させる
30度側臥位は、大転子部への圧迫を最小限にできる効果的な体位です。
体圧分散用具の使用
| 用具の種類 | 特徴 |
|---|---|
| 静止型フォームマットレス | 低コスト・軽量。軽度リスク者に使用 |
| 圧切替型エアマットレス | 自動でエアの圧力が変わり体位変換を補助 |
| 低圧保持型エアマットレス | 高リスク者・重症褥瘡患者に使用 |
| 踵用クッション | 踵の褥瘡予防に特化 |
介護保険でのレンタルが可能です(要介護認定が必要)。
スキンケア(皮膚の清潔保持と保湿)
日常的なスキンケアのポイント
- 清潔保持:温かいタオルでの清拭(失禁がある場合はこまめに拭き取り)
- 保湿:ヒルドイドや白色ワセリンなどの保湿剤を薄く塗布
- 摩擦の回避:清拭時は強くこすらない
- 失禁ケア:撥水クリームで皮膚を保護
栄養管理
低栄養は褥瘡の最大の危険因子のひとつです。
褥瘡リスクと栄養の関係
- 低タンパク血症(アルブミン値の低下)→ 皮膚組織の修復能力低下
- 脱水 → 皮膚の弾力・厚みの低下
栄養介入のポイント
- タンパク質の摂取量を増やす(体重1kgあたり1.2〜1.5g/日が目安)
- 亜鉛・ビタミンC・アルギニンを含む食品・サプリの活用
- 食べられない場合は経管栄養・経静脈栄養の導入を主治医と相談
褥瘡の局所処置
基本的な処置の流れ
- 洗浄:生理食塩水または水道水で十分に洗い流す
- 壊死組織の除去(デブリードマン):主治医の指示のもと実施
- 適切なドレッシング材の選択:滲出液の量・創の状態に応じて選択
- 定期的な観察・評価:DESIGN-Rで治癒の進行を記録
ドレッシング材の種類と選び方
| ドレッシング材 | 適応 |
|---|---|
| ハイドロコロイド(デュオアクティブ等) | 軽度〜中等度の浅い創・少量〜中等量の滲出液 |
| ポリウレタンフォーム(メピレックス等) | 中等量〜多量の滲出液 |
| アルギネート(カルトスタット等) | 多量の滲出液・感染創 |
| 銀含有ドレッシング | 感染創・バイオフィルム除去 |
| ハイドロジェル | 乾燥した創・壊死組織の軟化 |
ドレッシング材の選択は主治医の指示に基づいて行います。
褥瘡予防のリスクアセスメント(ブレーデンスケール)
| 評価項目 | 評価内容 |
|---|---|
| 知覚の認知 | 圧迫による不快感への反応 |
| 湿潤 | 皮膚が湿っている程度 |
| 活動性 | 身体活動の程度 |
| 可動性 | 体位を変えたり調節したりする能力 |
| 栄養状態 | 通常の食事摂取のパターン |
| 摩擦とずれ | 援助なしの移動時の摩擦・ずれ |
スコアが14以下でリスクあり、10以下で高リスクとされます。
家族・介護者への指導
家族へ指導すべきこと
- 体位変換の方法:2時間ごとに変える・ずれを防ぐ持ち上げ方
- 皮膚観察のポイント:骨突出部の発赤・水疱・傷の早期発見
- 清潔保持と保湿:清拭・保湿剤の塗布方法
- 報告すべきサイン:発赤が消えない・悪化している・臭いがある
「何かいつもと違う」と感じたら、すぐに訪問看護師に連絡するよう伝えることが重要です。
まとめ
褥瘡の管理は、予防・早期発見・適切な処置・栄養管理・家族支援を統合した包括的なアプローチが求められます。
訪問看護師は、限られた訪問時間の中でリスクのアセスメント・皮膚観察・体位変換指導・局所処置を的確に行い、多職種と連携しながら褥瘡の発生・悪化を防ぐ重要な役割を担っています。在宅での褥瘡ケアでお困りの方は、担当の訪問看護師にご相談ください。